加齢黄斑変性

加齢黄斑変性とは

目の構造をカメラに例えるなら「水晶体(すいしょうたい)」という光を通す器官がカメラのレンズにあたり、入ってきた光が「網膜(もうまく)」というカメラのフィルムのような場所にあたることにより映像が映ります。

その網膜というフィルムの中心に「黄斑(おうはん)」という視力の9割を担う大事な場所があります。その黄斑の病気のひとつが「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」です。

加齢黄斑変性とは、黄斑に老廃物がたまり、黄斑の細胞が傷んでしまい、物が歪んで見えたり、視野の中心がみえにくくなる目の病気です。加齢黄斑変性は欧米では失明原因1位の病気ですが、日本でも近年増加傾向にあり、失明原因第4位です。治療法がほとんどない疾患でしたが、2008年ごろから新しい治療法が始まりました。

加齢黄斑変性の種類

大きく分類すると滲出型と萎縮型に分けることができます。

滲出型は網膜の下にある血管が豊富な「脈絡膜(みゃくらくまく)」から「新生血管(しんせいけっかん)」という本来なかった血管が生え、その血管が網膜に侵入し悪さをします。

新生血管は普通の血管とちがい、非常に漏れやすく、血液の成分が漏れ、黄斑にお水がたまる「黄斑浮腫(おうはんふしゅ)」や網膜の下にお水がたまる「漿液性網膜剥離(しょうえきせいもうまくはくり)」を生じたり、黄斑に出血したりすることにより、網膜の細胞を阻害します。滲出型は萎縮型と比べると進行が速いと言われています。

萎縮型は黄斑の網膜色素上皮という部位の細胞が老化により、徐々に傷んでいきますので、進行は比較的ゆっくりです。

加齢黄斑変性の症状

ものがゆがんで見える

黄斑部が腫れて変形するため、ものの見え方も歪んで見えます。
普段は両眼で見ているので、気が付きにくいこともありますので、片目ずつで方眼紙などを意識してみていただくと気がつきやすいと思います。

中心がみえづらい、視野異常

黄斑は視野の中心部分を担っているので、黄斑が障害されていくと中心が暗く感じたり、一部欠けて見えたりします。

視力低下

黄斑は視力の9割ぐらいを担っていますので、黄斑が障害されていくと視力が低下します。
黄斑が完全に傷んでしまうと網膜の他の部分が正常でも視力は0.1以下になってしまうことが多いです。

加齢黄斑変性の治療

加齢黄斑変性は、ほとんど治療法と呼べるものはなく、視力は失われるに任せるほかはありませんでした。しかし、2004年ごろから滲出型加齢黄斑変性に対し、「光線力学的療法(こうせんりきがくてきりょうほう)」、2008年ごろから「抗VEGF阻害剤硝子体内注射(こうブイイージーエフそがいざいしょうしたいないちゅうしゃ)」という治療法が登場し、視力の低下や視界異常の進行を食い止め、正常な見え方を維持できるようになっています。
萎縮型加齢黄斑変性に対する治療の研究は現在も盛んに行われておりますが、残念ながらまだ有効な治療法はありません。

抗VEGF阻害剤硝子体内注射

抗VEGF阻害剤とは、血管内皮増殖因子(VEGF)を抑えることにより、脈絡膜新生血管をひかせ、新生血管からの漏れを防ぐ効果があるため、滲出型の加齢黄斑変性に有効です。ただし、残念ながら抗VEGF阻害剤を一度注射すれば病気が治ってしまうわけではなく、薬の効果が切れると再発することがほとんど、という長期の統計結果が海外でもでています。

したがって、抗VEGF阻害剤は定期的に注射をしないといけません。注射を打つ頻度はいろいろ提唱されていますが、2017年現在最も採用されている打ち方は、月1回を3か月間、それからは6週間後、8週間後と再発しなければ2週間ずつ注射間隔をあけて注射を定期的に行い、最長12週間まであけることができます。ただし、再発が確認された場合は次の注射は2週間間隔を縮めます。

当院では加齢黄斑変性の診断・治療に力をいれておりますので、当院でも抗VEGF阻害剤硝子体内注射をおこなっております。抗VEGF阻害剤硝子体内注射は現在ある加齢黄斑変性に対する治療では第一選択ではありますが、残念ながら完治させられる治療はまだありません。

継続して注射を打つことで、進行を食い止めることができますが、視力が悪くなってから治療を受けるよりは、視力が良いうちに治療を受ける方が視力予後は良いので、早めの治療をおすすめします。
しかし、費用負担の大きい治療であるため、当院では患者さまと密にご相談しながら、治療を進めます。

加齢黄斑ドットコム(ノバルティスファーマ株式会社)より

光線力学的療法(PDT:Photodynamic Therapy)

ベルテポルフィンという光に反応する薬剤を血管に注射し、網膜を障害しにくい程度の弱いレーザー光線を黄斑に照射することにより、脈絡膜新生血管内で薬剤を固まらせて、新生血管を退縮させる治療方法です。治療後は強い光にあたると光過敏症を生じることがあるため、治療後48時間は光に気を付けなければいけません。

光線力学的療法は、抗VEGF阻害剤硝子体内注射単独では治療効果が弱い症例や抗VEGF阻害剤の副作用のため硝子体内注射ができない症例を対象に行われています。こちらは特殊なレーザー装置を必要とするため、黄斑疾患を専門としている大学病院へのご紹介となります。

加齢黄斑ドットコム(ノバルティスファーマ株式会社)より