近視の予防

近視について

近視とは目に入った光が網膜より手前に焦点を結ぶ状態を言います。
一方、遠視は網膜より後ろに焦点を結んでいる状態を言います。
小さいころは眼球の大きさが通常小さいため、遠視のことが多いのですが、体の成長に伴い、眼球も大きくなり、眼軸(がんじく)という、眼の奥行きの長さが長くなると、次第に近視の目になってきます。
したがって、目がまん丸ではなく、ラグビーボールのように奥に長く成長していくと、近視が強くなっていきます。 近視の原因はまだはっきりしていませんが、遺伝的要因と環境的要因が強く関与していると思われます。
パソコンやスマートフォンなどを使用する機会が増え、昔のように外で遊ぶ時間も減っているためか、近視の子どもが増え、そして近視の程度も強くなっています。
近視は眼鏡やコンタクトで矯正しなければ、遠くのものがはっきりみえません。しかし、近い距離は近視の目のほうが、近くに焦点が合いやすく、近い距離を見る時間が増えた現在の社会に適応しているのではないかとも考えられます。
ただし、近視が強くなりすぎると、網膜剥離や緑内障の危険性が増し、さらに後部ぶどう腫、脈絡膜新生血管、網脈絡膜萎縮など強度近視に特徴的な病態をきたすこともあります。

参照元:参天製薬ホームページより

参照元:参天製薬ホームページより

近視の予防法について

1.低濃度アトロピン点眼  
アトロピンという調節力(ピントを合わせる目の筋力)を一時的に取り除く作用があるお薬を点眼する治療方法です。目は通常近くを見るときに調節力が働き、筋肉を緊張させます。
近くをみる時間が増え、調節する筋肉を緊張させる時間が増えた結果、眼軸が伸び、近視が強くなると考えられています。したがって、アトロピンを使い、調節する力を弱めることにより、近視の進行を3割程度抑制できると報告されています。
ただし、日本で処方できるアトロピンは1%と濃度の濃いものしかありません。
アトロピンは、瞳孔を広げる作用があるため、まぶしさ、手元がみえづらい、などの副作用があります。また、全身の副作用として、発熱、嘔吐などがあります。そこで、副作用を最小限に減らし、かつ近視抑制効果を保てる濃度が1%を100倍に希釈した、0.01%アトロピン(低濃度アトロピン)なのです。
残念ながら0.0.1%アトロピンは製造されていないため、当院では指定の薬局で希釈したものを処方しています。

2. MCレンズ
Carl Zeiss社製の特殊なレンズで作成した眼鏡を装用することで、3割程度の近視抑制効果があると報告されています。
簡単に説明すると、子ども用の遠近両用眼鏡だと思ってください。ひとつのレンズにと多くにピントが合う部分と近くにピントが合う部分があり、近くを見るときにお子さんの自身の調節力を眼鏡で補い、調節するときにかかる負荷を軽減することにより、近視抑制効果があると考えられています。
当院ではMCレンズの処方も行っております。

3. オルソケラトロジー
寝るときに装用し、角膜(くろ目)の形を変形させ、起きた時にはずす、特殊なコンタクトレンズです。
オルソケラトロジーが近視抑制に有効な理由は、網膜中心で焦点が合い、網膜周辺部では“近視性のボケ”という近視矯正に理想的な状態を作り出せるため、と報告されています。
低濃度アトロピン点眼およびMCレンズとは異なる理論ですが、近視抑制効果はやはり3割程度と報告されています。
低濃度アトロピン点眼およびMCレンズと比較して、オルソケラトロジーは高価であることと、レンズの装用や手入れなどが必要なため、当院では今のところ取り扱っておりません。