糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは

追加参照元: 緑内障の情報サイト(ファイザー製薬)より

糖尿病は、体内で糖分の代謝がうまくできなくなり、血液中の糖が上昇することにより、体の血管を阻害し、いろいろな全身症状を起こす病気です。

糖尿病の三大合併症として有名なのは、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症があげられます。そして、目の網膜の血管が障害されて発症するのが「糖尿病網膜症」です。

 

参照元: 緑内障の情報サイト(ファイザー製薬)より

 

網膜の血管が阻害されると、血液の流れが滞り、その手前の部分の血管にかかる圧力が上昇します。すると、血管の壁が薄くなり、血管に小さなこぶ(毛細血管瘤)ができ、血液の成分がじわじわと周辺に漏れてしまいます。

糖尿病網膜症は糖尿病を発症して7年~10年たったころに発症することが多いと報告されていますが、血糖コントロールが悪い場合は、もっと早く発症することもあります。多くの場合は自覚症状がないままに進行し、気づかず放置していると、増殖膜という本来なかった膜が発生し、網膜剥離をきたし、最終的に失明に至ることもあります。実際、糖尿病網膜症は、成人の失明原因の第2位となっています。さらには40~50代の働き盛りの世代では失明原因の第1位となっており、非常に社会的損失の大きい病気でもあります。

糖尿病網膜症の進行段階

糖尿病網膜症の進行程度は、大きく3段階ぐらいに分けられます。

1第1段階「単純糖尿病網膜症」

参照元:参天製薬ホームページより

まずは細い血管(毛細血管)から障害され、血管から血液が漏れ出し、小さな出血(点状・斑状出血)や血液中のたんぱく質や脂質が網膜にたまることにより、白い沈着物(硬性白斑)がみられるようになります。 この段階では血糖のコントロールを改善することで、糖尿病網膜症も改善します。

参照元:参天製薬ホームページより
2第2段階「増殖前糖尿病網膜症」

参照元:参天製薬ホームページより

毛細血管が次第に目詰まりを起こしてきます。血管が詰まると、網膜が酸素不足になり、網膜に白いむくみ(軟性白斑)がみられるようになります。
また、網膜に血流が途絶えた部分(無環流域)ができはじめます。この段階でもまだ自覚症状がないことが多いのですが、血糖コントロールだけでは治りにくくなってきます。

参照元:参天製薬ホームページより
3第3段階「増殖糖尿病網膜症」

追加参照元:参天製薬ホームページより

血流が途絶えた網膜が増え、新生血管が出現し、大きな出血が引き起こされます。さらに進行すると網膜の上に増殖膜が発生し、網膜を引っ張り、網膜剥離を生じます。
この時点で視力低下などの自覚症状が出始めますが、血糖コントロールだけでは改善できない状態になっています。

参照元:参天製薬ホームページより

糖尿病黄斑浮腫

糖尿病黄斑浮腫とは、網膜の中心に位置する「黄斑(おうはん)」に血管から漏れ出したお水がたまる状態で、糖尿病網膜症のどのステージでも発症する可能性があります。黄斑は視力を出すための最も大切な部位で、黄斑が障害されると視力は0.1以下まで低下します。

抗VEGF阻害剤硝子体内注射という治療法が登場して、以前よりは治療の選択肢が増えましたが、いまだに治療に苦慮することが多く、糖尿病網膜症で視力が低下する主な原因のひとつです。

糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症の治療で最も重要なのは、内科治療における血糖のコントロールです。食生活や運動習慣等によって血糖値を改善させ、維持していくことです。

内科で定期的に採血をしていただき、HbA1c7%未満に保つことが合併症を予防するためには大切です。
糖尿病網膜症が認められた場合は、下記治療を進めます。

1網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)

参照元:参天製薬ホームページより

増殖前糖尿病網膜症や増殖糖尿病網膜症に進行すると網膜血管が詰まり、網膜に血液が流れない部位(無灌流域)が生じ、新生血管が発症します。新生血管が生じると硝子体出血のような大きな出血をきたしたり、増殖膜ができる原因をなりますので、血流が途絶えた網膜をレーザー光線を使って焼く治療です。
レーザー光線は当てた網膜は傷んでしまいますが、糖尿病網膜症の進行を止め、より重篤な合併症を予防するために必要な治療です。また、糖尿病黄斑浮腫の治療としてもレーザー治療が行われることがあります。網膜の血管にできる毛細血管瘤から漏れるお水が原因で黄斑浮腫が生じている場合、その毛細血管瘤をレーザー光線で焼くことで、浮腫の改善が見込めます。

参照元:参天製薬ホームページより
2抗VEGF阻害剤硝子体内注射

参照元:参天製薬「アイリーアによる治療するをはじめられる患者さまへ」パンフレットより  

糖尿病黄斑浮腫に対する治療方法で、加齢黄斑変性の治療に用いられている治療と同様の治療です。目の中に抗VEGF阻害剤という血管からの水分の漏れを止める薬を注入し、網膜の黄斑部に生じたむくみ(浮腫)をとる治療です。
薬の効果が切れると再発することが多く、定期的に注射する必要があります。

参照元:参天製薬
「アイリーアによる治療するをはじめられる患者さまへ」
パンフレットより
3硝子体手術

参照元:参天製薬ホームページより

糖尿病網膜症が進行し、硝子体出血や増殖組織により網膜剥離を生じた場合には硝子体手術が行われることがあります。硝子体とは目の中の大部分を占める透明なゼリー状の構造です。硝子体手術は、眼内に27ゲージ(0.40mm)の細い硝子体カッターを入れ、硝子体を切り取り、眼内の出血や増殖組織を取り除くことができます。
眼内の手術器具は年々進歩しており、器具が小型化し、目への負担が減っています。

レーザー治療と抗VEGF阻害剤硝子体注入については、当院でも治療を行っております。硝子体手術については、必要に応じて、適切な医療機関をご紹介いたします。

参照元:参天製薬ホームページより